約6分で読めます2026年11月2日に確認
この情報は、裁判所・自死遺族支援弁護団などの案内をもとにしています。
このページの期限- 相続放棄 自分が相続人になったと知った時から3か月以内
まず知っておいてほしいこと
- 電車の事故のあと、鉄道会社から費用を請求されることはあります。でも、うわさのような何千万円、何億円という請求は、まれとされています
- 請求が向くのは、亡くなった方の相続人です。相続人でない家族や親せきが、自分のお金で払う義務はありません
- 相続人でも、家庭裁判所で相続放棄をすれば、相続人として払う義務はなくなります。期限は、相続人になったと知ってから3か月以内です
- 請求の連絡が来ても、その場で払ったり、書類にサインしたりしなくて大丈夫です
- ひとりで抱えずに、弁護士に相談できます。無料で相談できる窓口もあります
人身事故で鉄道会社から請求されることがあるもの
踏切や駅、線路で事故があると、電車が止まり、鉄道会社にさまざまな費用がかかります。その費用の一部を、損害賠償として遺族(相続人)に求めてくることがあります。弁護士の解説では、主に次のようなものが挙げられています。
- 振替輸送などの費用:電車が止まっている間、ほかの路線やバスで乗客を運んだ費用、運賃や特急券の払い戻し
- 車両や設備の修理費:電車や線路、踏切などが壊れた場合
- 人件費:事故の対応や復旧にあたった職員の費用
金額は、時間帯や場所、壊れたものによって大きく違います。自死遺族の法律問題にくわしい弁護士の団体は、振替輸送費は都会のラッシュ時には数百万円になることもある一方、地方の深夜なら数万円〜数十万円のこともあり、修理費や人件費は数万円〜数十万円ほどが多いようだ、と説明しています。脱線や新幹線・特急の大きな破損があった場合は、高くなることがあります。
請求するかどうか、いくら請求するかの方針を公表している鉄道会社はなく、事情によって違うとされています。請求の連絡が来るまで、数か月かかることもあります。
車で踏切の事故にあった場合
亡くなった方が車を運転していた場合は、加入していた自動車保険が対応することがあります。保険証券を探して、保険会社に連絡してみてください。
「遺族に莫大な賠償」といううわさと、実際
「電車の事故で亡くなると、家族に何千万円も請求される」という話を聞いて、不安になっている方も多いと思います。けれど、そうした多額の請求が実際に行われることはまれで、請求があっても話し合いで減額して和解することが少なくないと、弁護士は説明しています。
弁護士の解説で紹介されている徳島弁護士会の冊子(2013年)には、数百万円の請求があっても、最終的には数十万〜百万円前後で和解することが多いようだ、と書かれています。ただし、これはひとつの目安で、事情によって変わります。
裁判例:認知症の男性の事故(JR東海事件)
2007年12月、認知症の男性(当時91歳)が駅の線路に入り、電車にはねられて亡くなりました。JR東海は、振替輸送費などとして約720万円の損害賠償を、男性の妻と長男に求めて裁判を起こしました。
- 一審(名古屋地裁):妻と長男に全額の支払いを命じました
- 二審(名古屋高裁):長男の責任は認めず、妻に半額の支払いを命じました
- 最高裁(2016年3月1日):妻も長男も、男性を監督する義務を負う立場には当たらないとして、家族の賠償責任を認めず、JR東海の請求を退けました
最高裁は、夫婦や親子だというだけで監督の責任を負うわけではなく、生活の状況などから個別に判断する、という考え方を示しました。すべての事故で家族の責任が否定されるという意味ではありませんが、「家族だから払わなければいけない」とは限らないことがわかります。
また、亡くなった方が重い病気などで、自分の行動の責任を判断できる状態ではなかったと評価される場合には、賠償の責任そのものが問われないこともあります。こうしたことを調べて鉄道会社と話し合うのも、弁護士に頼めることのひとつです。
損害賠償の請求は相続人に向きます
亡くなった方が負うはずだった賠償の責任は、借金と同じように、相続人に引き継がれます。相続人は、配偶者(夫・妻)と、子ども→(子どもがいなければ)親→(親もいなければ)兄弟姉妹の順です。
- 相続人でない家族・親せき:自分のお金で払う義務はありません
- 相続人:何もしなければ、賠償の責任も引き継ぎます。相続放棄をすれば引き継ぎません
相続放棄をすれば、相続人として払う義務はなくなります
相続放棄をすると、はじめから相続人ではなかったことになり、鉄道会社への支払いの義務もなくなります。そのかわり、預金や家などのプラスの財産も受け継げなくなります。
- いつまで:自分が相続人になったと知った時から3か月以内
- どこへ:亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所
- 費用:収入印紙800円(1人あたり)と、連絡用の郵便切手
あわてて決めなくても大丈夫です
預金や家などの財産がある場合、賠償が心配だからと急いで相続放棄をすることは、弁護士の団体もすすめていません。請求が来るまで数か月かかることもあるので、3か月のうちに決められないときは、家庭裁判所に期間を延ばす申し立てができます(3か月がたつ前に申し立てます)。
決めるまでは、故人の預金や物に手をつけず、請求にも応じずにおきます。使ってしまうと、相続放棄ができなくなるおそれがあります。
相続放棄の手続きと注意点は、亡くなった家族に借金があったらにくわしくまとめています。
鉄道会社から請求が来たら
- その場で払わない。「払います」と約束したり、書類にサインしたりしない
- 何にいくらかかったのか、内訳と根拠を書面でもらう。示されていなければ、出してもらうようお願いする
- 相続放棄を考えているなら、決めるまで払わない
- 払う前に、弁護士に相談する。弁護士が裁判例をふまえて鉄道会社と話し合い、減額して和解できた例もあります
警察からの連絡や、ご遺体の引き取りについては警察から連絡が来たらに書いています。
無料で相談できるところ
- 全国自死遺族法律相談ホットライン(自死遺族支援弁護団):050-5526-1044(毎週水曜 12:00〜15:00)。自死遺族の法律問題にくわしい弁護士が直接対応します。それ以外の時間は事務局 06-6949-8277(平日 9:00〜18:00)。電話・メール・手紙での相談は無料です
- 自死遺族ホットライン(弁護士による相談):045-228-7832(平日 9:30〜12:00、13:00〜16:30)
- 法テラス・サポートダイヤル(0570-078374):問題に合った相談窓口を案内してもらえます。収入と預貯金が一定以下の方は、弁護士に無料で相談できる制度もあります
- 家庭裁判所:相続放棄や、期間を延ばす申し立ての書き方を聞くことができます
自死で家族を亡くした方へのそのほかの情報や、気持ちがつらいときの相談先は、自死で家族を亡くしたときにまとめています。
電車の事故で家族を亡くしたとき:よくある質問
電車の人身事故で家族が亡くなると、遺族は必ず損害賠償を請求されますか?
必ずではありません。振替輸送費や修理費、人件費などを請求されることはありますが、請求するかどうかや金額は事情によって違い、方針を公表している鉄道会社はないとされています。請求が来た場合も、その場で払わずに弁護士に相談してください。
何千万円、何億円と請求されるといううわさは本当ですか?
そうした多額の請求はまれとされています。請求があっても、話し合いで減額して和解することが少なくないと弁護士は説明しています。認知症の男性の事故で約720万円が請求された裁判では、2016年3月1日の最高裁判決で家族の賠償責任が否定されました。
相続放棄をすれば、鉄道会社に払わなくてよいですか?
相続放棄をすれば、相続人として払う義務はなくなります。相続人になったと知ってから3か月以内に、亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所に申し立てます。預金などのプラスの財産も受け継げなくなるので、財産がある場合は急いで決めずに弁護士に相談してください。決められないときは期間を延ばす申し立てもできます。
相続人ではない兄弟や親せきにも請求が来ますか?
相続人でない家族や親せきが、自分のお金で賠償を払う義務はありません。ただし、子どもや親が全員相続放棄をすると、兄弟姉妹が新しく相続人になることがあります。
自死で家族を亡くし、鉄道会社への対応を相談したいです。
全国自死遺族法律相談ホットライン(自死遺族支援弁護団、050-5526-1044、毎週水曜12時〜15時)や、自死遺族ホットライン(弁護士による相談、045-228-7832)で、無料で相談できます。どこに相談すればいいかわからないときは、法テラス(0570-078374)でも案内してもらえます。
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